公営ギャンブルで八百長はある?各競技の八百長対策を紹介

公営ギャンブルは過去に八百長が発生したことがあります。ここでは、公営ギャンブルで実際にあった八百長の事例、各競技の八百長対策の取り組みを詳しく紹介します。

目次

公営ギャンブルは過去に八百長があった

公営ギャンブルで実際にあった八百長事件

公営ギャンブルでは、過去に何度か八百長が起こったことがあります。

八百長の事例①:競艇

例えば競艇では、2020年1月に某有名選手がレースにおいて故意に着順を落とし、共犯者が買った舟券を的中させるようにした八百長事件がありました。この選手は、懲役3年の実刑判決を受けました。

「八百長」に手を染め、モーターボート競走法違反に問われた元競艇選手
(中略)名古屋地裁は10月21日、懲役3年、追徴3725万円の判決を言い渡した。

引用:NEWSポストセブン

八百長の事例②:競馬

競馬では、笠松競馬場でジョッキーが談合によってどの馬が勝つかを決め、知り合いにその馬券を買わせるという八百長もありました。

約9年間にわたって八百長が行われていたとも言われており、競馬場は管理体制の甘さから、約8か月間もの間、閉鎖されることになります。

八百長の事例③:オートレース

またオートレースでは、1969年~1971年にかけて「黒い霧事件」と呼ばれる八百長もありました。有力選手に八百長を持ち掛けて高額配当を出やすくしたうえで外部の後援者などに車券を買わせるという内容です。

プロ野球選手と暴力団員が、野球のみならずオートの八百長も仕組んでいたことが発覚。現役のオートレース選手19名が逮捕された。

引用:文春オンライン

ほかにも公営ギャンブルでは、八百長を疑う声が見られます。

公営ギャンブルの八百長対策

各公営ギャンブルの施行者は、様々な八百長対策を実施しています。どの公営ギャンブルも共通で行っているのは、下記の対策です。

各競技の関係者、家族はその競技に投票できない
レースまでの数日間、選手は専用の施設(宿舎など)に滞在する
施設内へのスマホ等(通信用電子機器)は持ち込めない
内部通報制度

それぞれ詳しく解説します。

各競技の関係者、家族はその競技に投票できない

各競技の関係者やその家族は、その競技に投票できません。「関係者」の定義は競技によって異なりますが、例えば競馬だと騎手だけではなく、運営職員、調教師なども該当します。細かくは、競馬法第29条に書かれています。

これは、一般人に比べると関係者は、競争に関して有利な情報を得られる可能性があるためです。すると、投票における公平性がなくなってしまいます。

レースまでの数日間、選手は専用の施設(宿舎など)に滞在する

公営競技では、どの競技もレース前日には専用の施設に入る必要があります。外部と接触させないことで、情報漏洩を防ぎ、八百長対策として役立っています。

また、専用の施設に前日入りする必要があるのは、「前検」という検査を受ける目的もあります。

前検(ぜんけん)とは、競艇、競輪、オートレースなどにおいて、開催初日の前日に行う検査である。

引用:ウィキペディア
前検日にやること(競艇)

・荷物検査(外部と連絡がとれるものはないかチェック)
・身体検査(体重、体温、血圧などの健康チェック)
・他レーサーへの挨拶周り
・ボート、モーター抽選(競艇はボートもモーターも競艇場からの貸し出し形式)
・ボート、モーターの受領点検と装着
・試運転、スタート練習、航走検査

選手はレースに出るたびに、これらの前検を受けています。

公営ギャンブルごとに滞在期間は違う

専用の施設に滞在する期間は、競技によって違います。

公営競技レース前~
レース後までの動き
競馬レース前日18時までに調整ルームに入る。レースが終わると調整ルームを出られる。
競輪レース前日に宿舎に入り、開催終了まで宿舎で過ごす。
オートレースレース前日に宿舎に入り、開催終了まで宿舎で過ごす。
競艇レース前日に専用の宿舎に入り、節(シリーズ)が終わるまで宿舎で過ごす。

中央競馬だと最短1日(前日から当日のレース終了まで)しかいない選手もいます。土日のレースどちらも出走する場合は、金曜日から泊まり込み、日曜日のレースが終わるまで拘束となります。

一方で競艇は、最大7日間も拘束される時もあります。

ボートレースは最大7日間(通常4~6日間)、連続でレースが開催されており、その期間全体のことを節という。

引用:BOATRACE公式サイト

競輪とオートレースは、基本的に1つの大会が4日間開催です。開催期間中は毎日レースに出るので、拘束期間は5日間となるのが一般的です。

施設内へのスマホ等(通信用電子機器)は持ち込めない

どの公営ギャンブルでも、レース前日に専用の施設に入る時に、私物検査を受けます。その時に、スマホやタブレットなどの通信機器は、施設に預けなければいけません

これは、メールや電話、SNSなどを介して外部と接触する機会を断つためです。外部とのやりとりを完全に遮断することで、八百長対策、馬に関する重要情報の漏洩対策として役立っています。

ちなみに、最近は競馬を中心にスマホを持ち込んだ、使用したなどの理由で騎手が処分された事例が報告されています。

JRAは3日、(中略)6人に30日間の騎乗停止を科したことを発表した。
競馬開催中の騎手控室にスマートフォンを持ち込み、インターネットの閲覧や調整ルームで他の騎手との通話が確認されたため。

netkeiba

騎乗停止を受けた後は、最終的に引退することになった騎手もいました。単に使用禁止とするのではなく、重い罰則を用意していることも、八百長対策になっています。

また、競艇では金属探知機の増加、私物検査の職員を増員するといった施策も行い、そもそも宿舎に通信機器を持ち込ませないための対策を強化しています。

2.管理・検査体制の強化
(1)全レース場に金属探知機3個を追加導入。
(2)私物検査に対応する職員数を、現在の5~6名から7~9名へ増員するとともに、競技部内の各所を巡回する職員等を別途配備。
(3)レース場競技部内の選手控室ロッカー内及び選手宿舎の居室等での抜き打ち中間私物検査を実施。

不正行為に関する再発防止策について | BOAT RACE オフィシャルウェブサイト

内部通報制度

内部通報制度は、組織内での犯罪行為などを匿名で通報できる制度です。八百長対策だけではなく、あらゆる不正行為や犯罪行為の情報を早期に把握し、事態が大きくなる前に対処する目的で整備されています。

内部通報制度が整備されていることも、「もしかしたら通報されるかもしれない」という形で選手たちの抑止力となり、八百長対策に役立っています。

4.内部通報制度の導入
ふれあいフリーダイヤルの活用や、メールによる専用相談窓口を新たに設置し、内部通報制度を導入。

5.不正行為の監視体制の確立
ネット・ブログ等での書き込みや内部通報に対して、異常投票や疑いのあるレース映像を検証するための委員会を設置。

不正行為に関する再発防止策について | BOAT RACE オフィシャルウェブサイト

各競技独自の八百長対策

各競技が独自で実施している八百長対策についても解説します。

競馬

競馬

長きにわたる八百長が行われていた笠松競馬場では、以降不正を起こさせないために、様々な対策に取り組みました。例えば監視カメラの増設です。八百長が疑われていた時期は、何と監視カメラが1台も設置されていませんでした。

その後2020年8月には7台、2023年5月には33台に増設し、調整ルームにおける監視体制を強めています。

<新たな設備による監視の強化>
・監視カメラの増設により死角を排除
監視カメラ :0台⇒7台(R2.8)⇒33台(R3.5)

公正で魅力的な競馬場をめざして

さらにHDDのデータ容量を増強して監視カメラ映像を長期に保管できるようにした、入室時は毎回金属探知機による身体検査を行うようにしたなどの八百長対策が行われています。

また、競馬全体だと、騎手が意図的に落馬した場合の重い処分(騎乗停止)を定めています。

人馬共に異常がないにもかかわらず、騎手が意図的に競走を中止した場合は、不正行為と見なされ、競走中止ではなく失格となり、騎手に対して重い騎乗停止処分が課される。

競走中止 – Wikipedia

短期的な利益(八百長での金銭授受等)のために意図的に落馬しても、その後のレースに参加できなくなるような重い処分を与えることで、八百長対策になっています。

オートレース

オートレース

オートレースでは、レースが開始する30分ほど前に「試走」が行われます。この「試走」は単なるお披露目会やレース前のアップではなく、本番レースと同様に全力疾走する場です。

オートレースの試走
引用元:レースを知ろう | オートレース Special入門サイト

顧客は、試走タイムを見て投票内容を決める人も多くいます。つまり、試走で手を抜けば、オッズをある程度操作することも可能となり、八百長の原因になる可能性があるのです。

しかし、試走で手抜きをした場合、罰則を受ける可能性があります。

罰則罰則内容
タイムアップ正当な理由(走路状況の変化など)がないにも関わらず競走タイムが試走タイムより良い場合は罰則の対象
試走戒告正当な理由(雨天など走路状況の変化)がないにもかかわらず、試走タイムが競走タイムと比較して0.02秒/100m以内だった場合に罰則の対象(直近6回の出場で2回戒告を受けると罰則対象)

参考:オートレース罰則の適用内容について

主な罰則は、勝ち上がり権や次のレースの出場規制です。オートレース選手は、レースの賞金が主な収入源となります。もしレースに出れないと、収入源を絶たれるため、生活にも支障が出る重大な問題です。

試走に関する罰則の設定も、オートレースの八百長対策に役立っていると言えるでしょう。

競艇

競艇

競艇は、八百長以外にもコロナ給付金の不正受給、予想屋との金銭のやりとりなど、様々な不祥事が相次いで起こりました。この状況を受け、国土交通省のモーターボート競走監督室は、不正防止の仕組みが整うまでは、全レース停止の可能性もあると勧告しました。

「職員の業務怠慢による不正行為が行われれば、競走実施業務は是正が確認されるまで、組織として行えない可能性がある」

東京新聞デジタル

結局勧告どまりで、その後もレースは開催されています。しかし、いざとなればレースが開催できなくなる状況をちらつかせたことで、管轄の国土交通省、各競艇場の管理者による八百長対策の取組が進んでくるでしょう。

競輪

競輪

競輪には「ライン」という独自のルールがあります。ラインとは、複数の選手がチームを組み、お互いのために他のラインの選手をけん制したり、ブロックしたりしながら、レースを進めていくものです。

1人の選手を抜くよりも、複数の選手で組んだラインを抜き去るのは大変なこと。
選手たちがラインを組むもう1つの理由は、他のラインに対抗するためです。

ラインを読む

この「ライン」の存在は競輪の大きな魅力である一方、「八百長の温床になっているのでは」と疑う声も見られます。

このラインの存在が、仮に選手間で秘密にされていたら八百長のようなものですが、大々的に公開していることで、観客はこのラインにおける選手のチームプレーも考慮して予想する必要があります。

また、競輪にはラインの仲間を裏切ってはいけないなどの暗黙のルールがあります。

仮に八百長をしようとしてラインを裏切って一人で1位を狙ったり、他のラインを勝たせるといった、裏切り行為をすると、競輪選手間での信頼性が落ち、以降のレースにおいて誰もラインを組んでくれなくなる可能性があります。競輪はレース終盤まではラインの力を借りないと、なかなか上位は狙えません。

ラインを組んでよい位置取りを確保することこそが、最終周回の個人戦の勝敗をわけるといっても過言ではありません。

ウィンチケット

そのため、ラインを組めないことは、レースで負ける可能性が高くなるということです。ラインの結束の強さは、ある意味競輪の八百長対策として役立っています。

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